決算書に関する本などを読んでいると必ず「CF(キャッシュフロー)」という言葉が登場します。
みなさんも感じたことがあるのではないでしょうか。
ですが、実際に有価証券報告書を見てみると縦に数字が並んでいるだけで頭だけで理解しようとすると非常に難しく感じてしまいます。ですが、財務諸表のうちの1つとして重要であることも確かです。
今回は、そんなキャッシュフロー計算書を「ウォーターフォールチャート」というグラフを用いて視覚的に捉えられるようにするためにExcelを用いて実際にグラフを作っていきたいと思います。
文章だけの説明だと分かりにくいかもしれないので、簡単な動画も作成したので実際に読者の皆様が作ってみようと思う場合にはそちらの方も参照していただければと思います。
※私の使用しているパソコンがMacなのでWindowsでExcelをお使いの方と実際の画面が異なる場合があるかもしれませんが、ご了承ください。
データを集めよう
今回は任天堂の2021年3月期有価証券報告書の連結キャッシュフロー計算書のデータを用いてチャートを作っていきたいと思います。
まず、キャッシュフロー計算書の大まかな構成としては前期末の現金及び現金同等物に当期の営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)、投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)、財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)を加えることによって当期末の現金及び現金同等物がわかるようになっています。任天堂の場合は連結キャッシュフロー計算書で海外子会社のデータも入るため、現金及び現金同等物の為替差損益を表す「現金及び現金同等物に係る換算差額」という表示もあります。よく分からんという方はとりあえず、円安とか円高で変動する額と思っておいてもらえれば大丈夫です。
ということで、今回ウォーターフォールチャートを作る上で必要なデータは現金及び現金同等物の期首残高、現金及び現金同等物の期末残高、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フロー、現金及び現金同等物に係る換算差額の6個です。有価証券報告書からこれらのデータを取り出してやれば良いということになります。

上の連結キャッシュフロー計算書から数字を見つけると以下のようになります。
項目 | 金額 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 621,402 |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 612,106 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | -136,533 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | -194,021 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | 30,042 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 932,079 |
これをExcelに入力してチャートを作っていきます。
Excelでチャートを作ろう
まず、以下のような形でデータを入力していきます。

ここでこれらの全てを選択して、「挿入」からグラフの「ウォーターフォール」を選択するとグラフができます。ここに少しずつ手を加えていきます。
まず、期首残高の棒をクリックして他の部分が白くなったところで右クリックをします。すると「合計として設定」という項目があるのでここを選択します。同様のことを期末残高にもするとグラフの一番下が0から始まるようになります。

この状態だと数字がマイナス部分が「ー」で表示されていますが、有価証券報告書内では「▲」を使うことが多いと思います。ここでも有価証券報告書に合わせてマイナスは「▲」で表すようにしたいと思います。
まず、グラフの数字を選択して右クリックして「データ ラベルの書式設定」をクリックします。すると右側のタブに「番号の形式」という項目があるので、そのカテゴリを「ユーザー設定」に切り替えます。そこの表示形式コードを「#,##0;-#,##0」から「#,##0;▲#,##0」に変更するとマイナスが「▲」で表示されます。

ここまでで大体形ができてきたので、あとはデザインを整えていきます。ここからは皆さんの好きなようにカスタマイズしていただければ結構です。私は以下のような設定をしました。
- 期首・期末残高を灰色、営業CFを赤色、投資CFを青色、財務CFを緑色、換算差額を黄色にする
- 例は数字やグラフを見たらわかるので消しておく
- グラフのタイトルを「任天堂 2021年3月期連結キャッシュフロー計算書」として、文字のサイズを「20」の太字にする。
- グラフ内の文字、数字もサイズを「14」の太字にしておく
- 縦軸の数値と横線はない方が綺麗に見えるので消しておく
- 単位を示すために横文字のテキストボックスを追加して、「(百万円)」と入力して枠線なし、塗りつぶしなしにしておく
- テキストボックスとチャートが一緒に動くようにグループ化しておく。

これで完成です。
このウォーターフォールチャートを使うことで数字だけでは分かりにくかったものが、目で見てどこにどのくらいのキャッシュが増加しているのかもしくは減少しているのかということが分かりやすくなります。
他の会社のキャッシュフロー計算書でも同じようにこのチャートを作ることができるので決算書の分析に役立てていただければと思います。